金属アレルギーとはある種の金属が原因で起こるアレルギーのことです。
アレルギーとは免疫の異常反応のことで、体内に侵入した異物を排除するための身体の機構を免疫抗体反応と呼びますが、本来の免疫機能が過剰にはたらき過ぎ、人体に悪い影響を及ぼしてしまう状態がアレルギーです。
金属との接触部に起こる接触皮膚炎(部位によっては粘膜炎)が代表的です。歯の治療に使う詰めものの金属が原因となって起こるケースや、直接金属と接触していなくても、症状が相当酷くなったケースでは、まれに食物に含まれる金属に対してもアレルギー反応を起こす場合もあるようです。
また金属イオンが血流によって全身に運ばれると全身性皮膚炎を起こすという報告もあります。
【口腔における金属アレルギーのメカニズム】
金歯・銀歯・アマルガムなどの「金属」が汗や唾液などの体液に溶け出し(イオン化)、体内に入りタンパク質と結合し、身体がこの結合物質をいったん「異物=外敵」と認識すると、免疫を作り身体を守ろうとします。この免疫が過剰に間違って働き、皮膚の炎症など人体に悪い影響を及ぼしてしまった場合、金属アレルギーを起こしたといいます。
【口腔におけるアレルギーを起こしやすい3大金属 】
口腔におけるアレルギーを起こしやすい3大金属、と銘打ちましたが、実際は口腔だけでなく、全身的にほとんどの金属アレルギーの原因は現在以下の3つとされています。
ニッケル・コバルト・クロムです。
実はこれらの金属は、私たちのお口の中でもたくさんの物に使われています。
もちろんみなさまもご存じの1円玉はニッケルですし、ヘアピンやピアス、ネックレスなどの装飾品にもニッケル・コバルト・クロムを含むものは多くあります。
一般的な金属アレルギーの症状や、アレルギー検査(パッチテスト)などに関しましては。またの機会と致します。
では、ここから先は大まかな金属アレルギーのことではなく、お口の中にある金属アレルギーの原因になり得るものについて3大要因としてお伝えしていきたいと思います。
≪金属アレルギーと口腔の3大因子≫
①銀歯
銀歯は私たち日本人のお口に最も多く使われてきた虫歯などの修復材料ではないでしょうか。あなた、またはご家族、お友達の中にも笑った時などに銀歯が目立つ方がいらっしゃるかもしれませんね。
この銀歯、多くの場合は合金です。主な成分として銀の含有量が多いものがほとんどですが、その中には上記の3大要因であるニッケル・コバルト・クロムが含まれているものもあります。これらも銀歯は本来歯とくっついていることが多く、歯科治療により外してもらわないと撤去できないものです。
②入れ歯(義歯)
入れ歯には人工の歯の部分、人工の歯茎の部分、フレームと呼ばれる全体を繋げる入れ歯の構成主要素、クラスプと呼ばれる残存歯に引っ掛けるようにして使用する爪の部分(部分入れ歯の場合等)という構成要素があります。
人工の歯と歯茎は主にレジンやセラミックスという金属ではない材料で作られています。フレームもピンク色のレジンという樹脂が多く使われていますが、さらに強度と薄さ(装着感が良好になる目的で)のために金属を使うこともよくあります。クラスプにも合金が使われます。
特に入れ歯には以前からコバルト・クロム合金フレームが常識的に使用されていた時期が長くあり注意が必要です。
③ポーセレンメタルボンド(焼き付け陶材冠)&レジン前装冠
ポーセレンメタルボンドとは実は見える部分にセラミックスを焼き付けた、とても審美性を重視した歯への被せ物です。なので、通常は白い歯であり、金属とは無縁のように思われている方もおいでかも知れません。
しかし、これも歯と接する部分に金属がつかわれており、その部分をフレームと呼んでいます。セラミックスとの良好な接着(焼き付け)の際に、金属表面に酸化膜が必要なため、主に合金化使われています。この中にもニッケル・コバルト・クロムが含まれている場合があります。あなたに白い歯も、全部がセラミックスのオールセラミックスなのか、一部金属を使用しているポーセレンメタルメタルボンドなのかは主治医に確認いただいておいた方が良いかもしれません。
レジン前装冠も、上記のセラミックスの部分にレジンという歯の色に近い樹脂を用いたものです。
④その他
また、お口の中には、ジルコニアとよばれる白い歯科材料や、アマルガムと呼ばれる黒い歯科材料もあります。
ジルコニアは別名ホワイトメタルとも呼ばれており、金属のような元素組成をしています。まだこれからの歯科では新材料ですので、さらに安全性を確認していきながら私たちの口腔材料へと昇華していくことでしょう。
アマルガムに関しましては、金属アレルギー以上に水銀毒の問題で多く取り扱われている事象がございます。今回の内容にはあえてアマルガム毒に関しては明記しませんでした。しかし、大変重要なことですので、また別章にてお話しさせていただきましょう。
インプラントも最近では日常的に口腔内で使用されている口腔材料です。素材はチタンやその合金です。チタンや金(ゴールド)などはとても私たちの生体と親和性が良いとされてきましたがやはりアレルギー報告は出ていますので、詳細は皮膚科との連携が必要です。ご自身でも何か自覚症状があるようならばお気を付け頂き、適切なご対応をなさっていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご質問などはどうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
2015年12月6日 カテゴリ:セラミックス, 金属アレルギー, 銀歯